ウロとラッパ
嘉村奈緒

庭が熱くて 幾重もの春がはりつくものだから
わたし 困ってしまっていたわ
被子植物のウロが溜まった真昼で硬くなってゆくのを
我慢して見ていたのよ
それでもわたしははらえないから 業者に頼んでおはらいしてもらったの

丁寧なラッパよ
泣きっ面も参るようなラッパなのよ

洗いざらしの地肌の上を凪が跳ねたわ それから野菜が撃たれ
わたしのくるぶしが窪んだわ
踊るなら今しかないとも思ったの そうよ
わたし、困っていられないのに困っているの
ねえ 業者のラッパは優しくなんかないわ
さようなら わたしのウロ かすれた被子植物と痂のような春!

はじめからさいごまでわたしは触れることができなかった
あの真昼はだらしなくて あんまりだったのよ
糸でも吐き出しやしないかと毎日見ていたわ
毎日見ていたのよ

ねえ さようなら ラッパ!
窪んでしまったところは諦めることにしたの



一人で世話をするわ
残された庭の世話に わたしは勤しむの





自由詩 ウロとラッパ Copyright 嘉村奈緒 2003-10-31 21:41:30
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