誰かが誰かをわすれない
梅昆布茶

 
 白く煙る街
 追いやられた通り雨
 きみたちはあまやどりをしていた

 廃屋からきこえるメロディー
 甘く官能的にせつない果実
 雨音がいまも耳に残って
 すでに誰もいない

 世界は何枚もの薄絹をかさねるように
 追憶へと人を誘うもの

 夜が昼をわすれないように
 あの街をさまよう
 昼は夜を捜して涙をながす

 ひきはがされた皮膚はちりちりと痛いが
 張り裂ける魂を癒してくれるだろう

 恋はいつも嘘をしたがえてくるもの
 なぜならつねに巧妙にすりかえられてきたから

 ルシファーよ真実を横取りしないで
 せめて血の色の薔薇をなげてくれ
 世界が染まるような堕天使のほほえみを
 街角に立つ女のように魅惑的に

 もし許されるものならば

 街灯ののしたでマッチを擦り暖をとった少女のように
 夢をみつづけていたいんだ

 誰かを忘れないためにちいさな炎を灯したいんだ

 儚い約束を守るために




自由詩 誰かが誰かをわすれない Copyright 梅昆布茶 2013-09-26 19:36:33
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