優しい葬列

その花の残り香を
私は憎む
枯れて捨てられた今も尚
微かに 確かに 残るその存在を
私は憎む

その花はとても美しく
それでいて派手さの無い落ち着いた面持ちで
場の暗く重たい空気を少しだけ和らげていた
いつもそう
花はそんなふうに
哀しみの中をきれいに泳いでいく

+

人々が集まり
奇妙に笑顔と涙顔を使い分けて
誰かの群れと語り合っている
辺りには 優しい言葉が溢れかえり
ぽっかりと何かが抜け落ちた時間が 静かに流れていく

やがて
それぞれの表情を抱えて
それぞれの場所へ 人々は帰って行った
沈む日の光を斜めに受けながら
それぞれの無表情で
こちらを眺める花の姿が
私の目に焼き付いて ずっとずっと 離れなかった

+

水をやることを忘れている間に
時はすぎて
やがて優しさも忘れられていった

その自然な成り行きに
ふと笑みをこぼしながら
そんな自分に戸惑い
そして思う

+

私は花を憎む
花を憎んで 生きていく



自由詩 優しい葬列 Copyright  2013-09-09 22:55:02縦
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