イシダユーリ

吐きたい
ということは
感動したい
ということだ
けれど
どちらも
口にはだされない
低い
紫色の空から
隕石が
落ちるのを
待つことはできない

朝に濡らした手で
夜まで砂場を撫でている
君は
と呼びかける声が
君を
君という風船にして
君は見えなくなる
目がかわいいね
とびだしている
君の皮膚を触ってはいけない
私が侵される

吐きたい

私の粘膜を翻して
電信柱が立っていることを
叫びたい
君は立っている
立っている
電信柱だ
君は立っている
美しい
君は
たましい

朝に濡らした手は午前のうちに乾き
砂にまかれてあたらしくつかむものはないまま日暮れる
歌えば喉が裂けるのなら歌いたい
演じれば皮膚が爛れるのなら演じたい
目が潰れるならば君をみたい
君が
私にとって
君でなくなるのならば
私のなかの白が膨れて君を押しつぶすのならば
震えたい

感動するとわかっている
私は白を押し上げた
くらやみ
晴れ間
旋律
約束は

砕かれる
撫でている
これは
埋められた
「生きたことのない」
壁に
腹を
ぺっとりくっつけている
私の汗をあげる

100年前の恐怖の顔を両手ではさんで
よく似ている
とつぶやく
私は祖母
ぽたりと
落ちる
同じ
同じ
わたしとおなじ
きみはからだをよじる
火がついたように泣く

かわいそうだと言い放つ間もなく
かわいそうだと言われることに
慣れていく7年間
感動したい
感動すれば許されるだろう
私はずっと
誰かが走っている影をふむ








自由詩Copyright イシダユーリ 2013-09-09 22:15:43
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