ご自由にお取りください
あおば

               130906




五重にお取り下さい
と聞こえたので
5枚頂いたところ
白い目で睨まれた
翌日は
ご自由にお取り下さいと
白い紙に
達筆で認めてあった
これは
私への当てつけなのかそれとも
達筆を世に知らしめたいのか
素直な心がだんだん歪んでゆくのを覚え
なにも書いてなければ
好かったのにと思う

先日別の会場を訪れたところ
入り口ドア横にフライヤーが慎ましく置いてあり
ここでのイベントの告知だろうと
帰り際だともらい忘れるから
入る前に一部頂いた
カバンに入れる前に
瞥見して驚いた
本日の特別企画の告知で
只今将に公演中のようだ
加えていつもは無料なのに
本日は大勢のゲスト出演もあり
料金を払わなければならないらしい
なにも知らないで入れば好かったのにと
手に取ったのを少しだけ後悔する
入るか入るのを諦めるか
どちらかに決めなければならない
開催中の今入場すれば
熱演を疎外する邪魔者と
満員のお客様の冷たい眼と対峙しなくてはならないなとも思う
所詮こことは縁がなかったのだと
辺りには誰もいないのを幸い
すごすごと退散する
蝉の声がやけに喧しく
揶揄しているのか
それとも夏を謳歌しているのか知らないが
バス停までの距離がやけに遠く感じたのは確かだった
知らぬが仏とはよく聞く諺だが
意味がイマイチよく分からない





初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトルは、るるりらさん



自由詩 ご自由にお取りください Copyright あおば 2013-09-06 19:38:57
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