旅人
梅昆布茶

そ知らぬ貌で通り過ぎてゆく 誰も名前を知らない
ちいさな天使たちが まとわりついて離れない

空が落ちてきたとしても君はその歩を緩めないだろう旅人よ

猫の死骸が雨に打たれていようと
お月様が三角に見えようと

金魚屋古書店のおねーさんがどんなに魅力的でも
一冊の本をセドリする手が震えようともそれは変わりはしない

見慣れぬ町並みを一瞥もせず走り抜ける自由へと開放へと

夢で見た田舎芝居の小屋掛けのなかで薄暗い湿り気をおびた空気

僕は半券を握り締めて夜を泳いでゆく

君の声のするほうへ ひかりが或るところへ 眠れる場所へ





自由詩 旅人 Copyright 梅昆布茶 2013-09-01 19:26:42
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