千の丘を下る
梅昆布茶

哀しい村を過ぎて丘を下る 教会の鐘が鳴る午後 マリアは涙を流す

礼拝堂は空虚で まるで僕の心みたいに 遠近法を失っている

君の庭園はとても静かだ 静謐という名の永遠

遥か高みを鳥が横切ってゆく 悲痛な歌をうたいながら

母親たちは子供をあやす 聴き慣れた子守唄に載せて

千の丘を下る 夜の瞳を覗く 星の無い夜に歌う

千の谷を超えて 君に会いに行く 千の風にふかれて 愛を失う

饒舌な夏が過ぎたら 君と語らいたい 幾千の夜が来ようとも 変わらぬ褥で休もうと

寡黙な冬には毛布にもぐって 暖めあおうと 誓い合おうと思うんだ

秋には枯葉を拾い 透明な風に沿って流れてゆく 光の中を

春には土筆とともに 土の下から新たに生まれてくるのだ

千の昼と 千の夜に 君と出会う

そんな命が

欲しいと思っているんだ






自由詩 千の丘を下る Copyright 梅昆布茶 2013-08-15 23:37:26
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