遠く雑踏を離れて
梅昆布茶

華やいだ季節が過ぎて 気がつけばまた一人

一番確かなことは 誰も僕の内面を知らないってことさ
まあお互い様だけどね

君は僕と違う橋をわたる それぞれ別の国を夢見ている
行きずりに眼と眼が合っただけ それだけさ

大理石の城はいらない 月の見える小さな部屋が欲しい
抜け殻のような僕を横たえるベッドがあればいい

壁にシャガールの絵を貼ってラフマニノフの曲を聴こう
届かぬ熱い指を月夜の川面で冷やすように

真夜中に僕は蛹になる そしてある月の良い晩に孵化するんだ
そう夜の翼で君の夢へと飛んでゆく

僕は蜉蝣 透き通った翅で 柔らかに空気を揺らす
君の吐息に吸い寄せられてゆく 哀しい昆虫なのだから

夜のしじまを旅する者たちよ願わくば想いを伝えてよ
季節は過ぎ花の香りも変わって行くのさ

あなたの心は何処にあるの 明るい日差しのなかで
一緒にめざめることは出来ないの
ダージリンの香りのする 鳶色の朝に 



自由詩 遠く雑踏を離れて Copyright 梅昆布茶 2013-08-09 17:38:34
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