やもめの星
梅昆布茶

流しにうず高く洗われぬまま放置された食器
とりあえず洗濯はするのだが部屋干しのまま畳まれることはない
読まない新聞が玄関に散乱している

居間の一角は得体の知れない整理しかけの古本がうず高い
灰皿はどれも吸殻で山盛り
ベッドは万年床で夜勤なので昼間は寝ていたりする

安酒のビンや缶がきままに転がっている
部屋の中を小蠅が飛ぶもちろんゴキブリも出てくるが

一番恐ろしいのはここの住人だ
自由気ままに詩と称して駄文を綴り酒を飲み
妻と子に見放されたことのうさをはらそうとしている

教養も蘊蓄も無くただ棒のような詩を書く
たまにスクット起き上がって奥田民生のさすらいなどを
下手なギターをかき鳴らして歌う

もちろんゾンビではない
普通のしょぼたれた親父である

あまりこういう生物を想像しないでくれ
子供の教育に悪いから

やもめの切なさはわびさびに通ずるのかもしれない
あまりお勧めはしないがやってみたい人はやってみたらいかがかと

やもめの星は物悲しい
自身を捨てた痛みもあってでもしょぼい

奴隷として故国と引き裂かれたブルースが
僕に歌えるだろうか

誰が聴くのかわからないブルース

僕はいつも君の必要なものを考えて行く

さいごまであるいは破綻そして融合

主題はぼくたちだったりして


やもめのきらきらとした星たちにささげる

やもめは美しい

まるでかもめのように




自由詩 やもめの星 Copyright 梅昆布茶 2013-08-06 17:53:50
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