天籟
草野春心



  透明な鍵盤に置くかのように
  あなたの指が宙にとどまる
  噎せ返るほどに暑い八月
  そんな形で朝は始まる



  夢のなかでそれは確かに
  風靡く草原を鳴り渡っていた
  細やかな弦をしとしとと震わせ
  鳥や虫や石でさえ恍惚に導く音色で



  今、あなたの唇がかすかに上向く
  それがあなたの微笑み
  決して空気を伝わることは無くとも
  私の魂を打つただ一つの響き




自由詩 天籟 Copyright 草野春心 2013-08-04 23:12:15縦
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春心恋歌