ノラ猫の歌
石田とわ
おとこに捨てられた、
だからノラ猫になった
夜空をみあげにゃあと啼いては
まんまるお目目に三日月うつし
うろついた夜の街には
千鳥足の奴らがいっぱいだ
(ダイキライ!)
涼しい顔でするりとかわし
ころがる蝉と遊んでみたり
なびく猫じゃらしと喧嘩する
(酔っ払いあいてにするほどひまじゃない)
おとこはもういないから、
ノラ猫だから、
おもいっきりのびをしてあくびする
顔をあらって寝なくっちゃ
ノラ猫だって顔を洗う
あしたはあしたの風が吹くって
こういうことをいうんだね
凪いだ風が生温かく頭をなでるよ
だれかの手がこんなふうだった
あしたの風はどんな風だろう
きのうのことも今日のことも忘れたよ
おとこの顔はもう思いだせない、
だってノラ猫だから