トーチカ
嘉村奈緒

天井に頭がつきそうなあなたと
どてっ腹に穴のあいた私は
どこか浮かれた心地で手を繋ぎます
やがて日暮れて
子どもたちはそれぞれのミノに潜りはじめる
私たちも
アンゴラのマフラーを身につけます


高山病に悩むあなたの指先に
冬の花はこぞって受粉させる
あなたは徐々に枝分かれしながら
美しいミツロウになっていくのです



順序良く冬支度を終えれば
キリキリと木枯らしがやってくる
木枯らしに滅法弱いあなたと私は
身を寄せ合って
冬に相応しい会話を幾つかと
静粛な純愛をします







(ミツロウ=蜜蝋)


自由詩 トーチカ Copyright 嘉村奈緒 2005-01-03 16:24:51
notebook Home 戻る  過去 未来