その日暮らしの手帳
梅昆布茶

いつもその日一日生きれればいいとおもっている 多くは望まない
望んでも身の丈に沿わないものは無駄になるだけ 誰かに進呈しよう

身の丈に合わない結婚生活のなかで似合わない幸せを願った事もあった
まあ それはそれで楽しかったのだけれど

年月は人の輪郭を 内面を変えてゆくものだ
僕はいつか枯れてゆきたいとおもっている 静かに潮の引くように

もういまさら大波は来ないだろうさ 僕はサーファーではないし
しいて言えば丘の上のお馬鹿さんだろう

多くを失ったがそこから得た教訓は とても貴重なもの
鴨長明が方丈記で述べたことを 確かな命としていま生きている

もう自己憐憫の涙で自分を洗う事もなくなったし 静かに人生の次なる階段を実感したい
年老いたナルシスは 次代のナルシスにとってかわられるのだ

もう恋も遠い遠い世界だ くるものもさるものも蝿だって追わないものぐさだもの
でもときどきこっそりデートの約束やら 取り付けてくる 古強者ではあるが

最期に無常を観じて逝きたいとおもっている
誰にも看取られず 一人で空に還る 生まれた時も一人だったさ

ただもう孤独ではない そういう感傷がなくなった
そう 立派に親父として大成しているのかもしれない

我が子に言わせたらブーイングの嵐だろうが まあいいや
どうせ俺に似てるんだからな 可哀想だけど

ただ欲目で言わせてもらえば 俺の子は三人ともに優しい
俺にやっぱ 似ているもんな

うちの嫁はかなり鬼嫁だったから それでも一つの救いだが
いまだに嫁の心配もしている

その日暮らしだから綿々と描いてもいいのだろうが
どうせまた 同じような事を書き連ねるので ここでやめておく

その日暮らしの手帳は
いつも僕のお尻のポケットに
入っているんだもの






自由詩 その日暮らしの手帳 Copyright 梅昆布茶 2013-06-27 14:48:30
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