ギャング
梅昆布茶

北の果てのとある国 閉ざされた凍えた大地 流氷漂う暗い海峡
灯台の灯りさえ今にも夜に飲み込まれそうなそんな港街

幾人かの荒んだ風体の若者達が流行りのリズムにあわせて
からだを揺らせながら焚火を囲んで暖をとっている

炎に浮かぶその相貌は 鬱屈した退屈した あるいは絶望に近く見えたのだ
時に議論し煙草をせわしげに吸っては また暗いリズムを追っている

戦争という磁場は この若者達にどういう理念を育てるというのだろう

たまに散らつく粉雪は 炎にあたって音もなく溶けてゆく
ざんばらな髪に降りた雪粒は 暫しの若き戦士の花飾り

なにに対する闘いなのか 戦略は戦術は そこに大義はあるのか

かつて南方では人民を犠牲にした悲惨な戦争があった
ただ覇権のために 武器をためこんでなんになろう

戦争の後であがる旗は 希望や喜びという名の美名にカモフラージュされた

権力の移譲に 過ぎないのかもしれないが 確かに変革の基点ではあるのかもしれない

だから 次の権力に 渡さないために

奴らから歴史の進路を奪うために 家族や仲間や 無数の散華したすべての同志のために
ラップにのせて 闘うのだ もちろん限りなく鬱屈した フリーダムのために

路上には 相変わらず 粉雪が舞っているが
彼らの見ているものは

限りなく近くて
そして 遠いビジョンだったのかもしれない










自由詩 ギャング Copyright 梅昆布茶 2013-06-14 20:44:01
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