うず
そらの珊瑚

浴槽の栓を抜く
しばらくは何事も変わらない水面
さざ波のそぶりさえない
今 渦中では
見えない引力に導かれ
出口へと
まさに水が
わあわあ殺到しているというのに

ことの始まりは
いつだって平穏(にみえる)

顕微鏡でのぞけば
ぬるま湯が汚れているのが見えるだろう
人からしみ出る垢、汚れ、
うようよとした浮遊物の類い
生命体であることの
まぎれもない証

煙草一本吸い終わる頃
世界はにわかに活気づき
大きな手によって
時間は圧縮され
終局をいそがされる

ことの終わりは
いつだって切羽詰まる(ようにみえる)

うずがまく
右回りに整列して
ごごご、と末期の声を叫ぶ
私はのぞきこみ
その中心に現れた
一瞬のひとつ眼をとらえる

気づこうと
気づくまいと
途方もなく大きなうずが
いつだって人を取り巻いている
母のうずから
生まれてきてから
それを
運命と呼ぶには
あまりに得体が知れない



自由詩 うず Copyright そらの珊瑚 2013-06-01 23:25:42
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