十六夜と君
石川湯里

僕がここでこうして生きていることの証を
この世のあらゆる生命に臆することなく伝えたい
少なくとも近所のいきがっている連中だけは絶対に許せない
いつでも何人かでつるんで中身のない会話を垂れ流し
そうこうしているうちに日が暮れて
夜になって

深い悲しみから逃れようとすればするほど
潮騒だけ遠ざかって取り残されてぽつん
いっそのことカラオケに行ってしまえたらいいのに
できるだけ長く歌い続けられたらいいのに
喉がかれるかかれないかのぎりぎりのところまで
ここでこうして生きていることの証を
明日につなげたいあしたになったら

喉がひりひり痛むだろう
それでもかまわない今日という日を無駄にしないために
僕は地獄のそこから何度でも這い上がってみせる
君のこと好きだから

君はなんていうだろう
仮に、僕が君のこと好きだからって言いながら
地獄のそこから這い上がってきたら

伝わるだろうか
伝わらないのなら
こんなことしない方が良いかものしれない
そんなことわかってるよ
そもそも君は僕がどんな思いで
毎日を生きてるか想像してみたことはあるか
想像してごらん
きっと見えてくるはず

もしも何も見えてこなかったとしても
どうか自分をせめないで
その時は、友達からはじめるといい
結論を急ぐことはないさ
潮騒が遠ざかっていく
いっそのこと埋め立ててしまえたらよいのに
あの月を
割ってくれませんでしょうか


自由詩 十六夜と君 Copyright 石川湯里 2013-05-27 23:39:57
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