教室
吉岡ペペロ
神様、仏様、ご先祖様、
ぼくは手を合わせて祈っていた。
目の前では先生が怒っていた。
神様、仏様、ご先祖様、
本当に手を合わせてぼくは祈った。
先生はいちにちにいちど烈しく怒る。
きょうは給食の準備中でだった。
なんで先生がこんなに怒っているのかは重要ではなかった。
神様、仏様、ご先祖様、先生の怒りがおさまりますように、
先生が突然ふてくされたようになってぼくらに質問した。
「おい、きみたちのなかで、この空気をかえれるひと」
静まりかえった教室に水田くんの声が響いた。
「にどとしません!」
先生が黒板をバックハンドで叩いた。
「そんなんじゃだめだ!」
思わず祈るのをやめてぼくは手を挙げた。
「なんだ?きみ変えれるのか?」
ぼくは立ち上がった。
そしてか細い自信のない声でこう言った。
「せんせい、」
教室がさっきより静まりかえっていた。
「せんせい、おなかがすきました」
教室が笑って先生も朗らかに腹をかかえた。
ぼくも顔をひきつらせてすこし笑った。