順番
夏美かをる

父の母が亡くなり
その後しばらくして
父の兄が亡くなった時
父がぽつりと言った
「今度は俺の番だな」

その順番の通り
父は亡くなった

四十九日が過ぎた時
母がぽつりと言った
「順番が狂わなくてよかった。
 私が先だったら、
 あんた達に迷惑掛けてたよ。
 お父さんは偏屈だったから」

昔母はよく私達に言ってた
「親より先に死ぬことが
 一番の親不孝だよ。
 順番が違うんだからね!」
 
娘達の笑顔を見る度私は祈る
―どうか、
 どうか順番を狂わせないで―

「いつでも逝けるように
 最近は身の回りのものを
 片付けているんだよ。
 今度は私の番なんだから」
会う度に
ひとまわり小さくなっている母が
畳む手を休めずに言う

タオル、ズボン、シャツ、下着 靴下…
五十年間変わることのない順番で
折り目までもが
あまりにも正しく揃った洗濯物が
次々と鮮やかに
積み重ねられていく


自由詩 順番 Copyright 夏美かをる 2013-05-11 02:27:55
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