(何かについて打った、何かをまとめるスペース)
(1+1)/4

(手前にいくほど新しい作品(…;)になる予定です。

 * * *

 2013/08/26 その2。


青い空。白い雲。緑の木かげ。
いい天気だ。

やっとやっと、
おれは おとなになって お前の名前を大声でよべるんだな。


「jujuー!jujuーー!! 愛してるぜええええええ うおおおおおお!!!!!」
「みんみーん! みんみーん! 名前はベタやねんけどシアワセにしたるでーーーー!!!!」

子どもんころからひとりっきりで 誰かのなまえなんてよぶ必要のなかったおれらが、
はじめて空に響かせる音は 思いえがいた相手に付けたい これぞと思った名前の数々
あちこちで同類、もとい、ライバルたちが声を競う

「ジジ!ジジ! オレだーーー!こっちこいやあああ!!!!!」

女のコたちが気に入ってくれれば、相手から名前をもらって、それをこっちが受け入れたらそのまま合体!
相手がうまく産卵して、子どもが元気に育ってくれれば
晴れておれらは、子どもらに伝えられるもの語りの一ページに収まるわけだ。

子どものころ、ひたすら土のしたで、根っこの汁を吸っては移動、吸っては移動、なんの娯楽もない中で、
たくさんの代のおやから受け継がれてきたもの語りを、体の隅からおもいだすのだけが楽しみだった
いい根っこの探し方とか、アリの巣のよけ方とか、そういう生きるのに大事なことはもちろんのこと、
代々のおやたちの恋の独白が赤ララに記されていて とても面白かった

――やっぱおれらの名前ってバリエーションねえのかな、jujuとかジジとか。
  みんみん言ってるのはあれ、明らかに他所モン、そんでもってすげえウルセエー

とと、呑気に樹液すすってるバヤイじゃねえ。おれも地上にでて7日目。
そろそろ、本鳴きがサマになってこないとカッコ悪い頃合だ。


「ミミ! ミー!ミー! お前なら解るだろ? おれだーーっ おれはここにいるぞおおおおお!!!!!」


おれたちの名前の連呼合戦が青々とした桜の木々にこだまする。
叫べど、叫べど、待ちびとはこない。というヤツの方がまだまだ多い。

そんな中で、おれの方に近づく一匹のメス。
茶褐色の羽。間違いなく同属だ。
ついに。ついに、おれのミミに――

「あたしはjuju。あんたに名前付けてもいい?」

――は?

「いやいやいやいや、おれ、違うよ? おれ、ミミ、って呼んでたジャン」
「たしかこの木に留まってたのよ、jujuーーーって呼んでたひと。」
「や、たしかに近くにそんなやつ居たような気がするけどさ――」
「――じゃ、そのひと飛んでったの?」
「や、あの呼びかけからは想像できないかもしれないけど、あいつ挨拶しっかりしていくヤツだったから」
「そうよね、あたし、呼びかけの方に向かってけっこう真っすぐ飛んだもの。
 せっかく声の聞こえるほうに、このひとならいいかなーと思って、きたのにたどり着いたら」
「もう声がしないんですもの」

そういえばあいつ、おれより10日ほど前に出てきてたって言ってたな。
おれの位置からだと想像でしかないけど、多分、木から落ちてジタバタあがいてるんだろうぜ。
せっかく女のコGETしたのに、ナニやってんダヨお前ほんとスタミナ0%かよ、

「こっちも命がけだっていうのに、。
 あたしのことを助けると思って、カップルになってくれない?」

「うーーーーん、、、、、、わかった、じゃあ、キミの名前はミ、」
「jujuで。この名前は譲れない」
「ナニソレ」
「だってあたし!この名前がいいなあーって思ってここまで来たのよ?そこは変えられない!」

端から聞いてたらおれ今絶対ヘンな誘い鳴きしてると思う。これどう聞いても恋人同士のささやきじゃねえし。

「――わかったよ。でも、おれの名前はおれの本命につけてもらうから。
 あいつのこと呼ぼうって思ってた名前でおれのこと、呼んでもらっていい?」

かくしておれは、jujuからはジョージと呼ばれることになった。
合体のあいだ おれたちは、おとなになってから知った樹液の味の鮮烈さについて、とか、代々のおやの話しとか、羽化がやばかったことなんかで盛り上がった。

「そろそろかな、と思ってさ、地面スレスレまで掘ってたとこから出てさ、乾くー乾くぅーって、もう、気持ちはダッシュじゃん?」
「けど、土の中みたいにサクサク進めないよねー」
「ヘンな黒くてアツい土の方にうっかり行っちゃってさー」
「あの土ほんとヤバイ。死ぬかと思った」
「元来たほうへ戻るように進め!っていう謎のおやの教えのイミが分かった、というか」
「なんとかしがみつくとこ見つけて」
「あたしもー あんときはほんと必死だったわー」

頃合を見計らって、jujuからはなれると、jujuは慌しく姿勢を正して、

「あたしもそろそろヤバいんだ、今日で14日目だし」
「おう、おれたちの歴史の一ページ、残してくれよ」
「もちろん。あんたがあたしに言わなかったことまで、あまさず残しといたげる」

そういってjujuは飛び立った。がんばれよ、と最後に声を掛けてやったけど聞こえていたかどうか。


おれは、おれはお前にあえるのかな、ミミ。
jujuには悪いが、
いや、jujuやジョージって呼ばれるはずだったやつにも負けないぐらいに、

おれはお前をあきらめない。
大声でお前を呼びつづけるよ、


 * * *

 2013/04/28 その1。


とにかくこうやってずっといる。
ずっと、というと曖昧だが、
まあ、ずっと。


おれがじわじわと、めきめきと、この世界に顔をだしたのはいつのころだったか。
いきものたちはびっくりして、
ひからびて、
かたまった。
こんなに世界が寒いものだとはおもわなかったから、おれもびっくりした。

すっかり はだかで さむいさむいとじっとしていたおれを、
太陽と大地のこどもが、なでていく、
はじめはちょっと落ち着かなかったが、
そのうちそいつ、風は、おれのはらや腰のあたりに、ほんのちいさなみやげをぽいぽい
置いていくようになった、次第にくすぐったいきもちになってきた
だんだんあたたかくなってきて、
ときどきはきれいな色の服を着るようになっていたおれに、
たくさんのいきものがやってくるようになった

太陽と海はきまぐれに、
そろそろ顔を洗いたいころだろう?と
顔面めがけて雲を投げつけてくる。
なかには温度調整できなかったって氷まじりを投げてこられる同類もいると聞くから
おれはまだましなほうかもしれないが
それでもいつも当てられたところから半身ずぶぬれだ
たしかにおれは 自分の身のまわりのことができないが
お腹側だけ、とか、背中側だけ、とか、いつもきもち悪いお風呂タイムに
おれは はらがたっている。
それを率直に奴らに言ったら、
え?水分補給だよ。ウォーターサプライ。
といわれた。

正直にいうと、おれのからだもいくらかは水分でできている。
ちょっと血のめぐりがよくなる感じっていったらわかりやすいだろうか。
やり方は多少強引だが、水分補給のあとは服の調子もよくなるし、いきものたちもうれしそうだ。
けれど地面にひろがる水のながれを おしっこ垂れ流し、って笑うんで
なんていったらいいかわからない気持ちになる。
海よ、その水は、お前のほうにむかっているんだぞ!

普段おれは、微動だにしないというイメージをもたれているようだが、
ほんのすこし動いている。
動きにあわせて服の模様がびみょうに独自のものに変わっている、らしい。
たしか他ではつかわない模様がある、ってとびはねてる、おまえらの仲間がいたぞ。
けど、模様は残しつつも服は新調したりする。
いつのまにか着なくなった服の材質は、また着てみようとは思わないんだよな、、
まあ、ボロになるまで着倒すのがおれ流なんだけど。

こうやっていろんな服に着替えてみると、
いきものたちはおれの服に集まってくることがわかってきた。
新作によってくるやつ、むしろボロが好きというやつ、集まってきたやつらが目当てのやつ、それをみるのが好きなおまえらの仲間みたいなやつ、
いろんなやつがいたさ。
もういまはちっとも、地面のほうにもいないやつとかさ。
いつもおなじやつらだと思ってたら大まちがいで、だんだん年をとっていたりするんだ。
そしていなくなる。
おまえらにとっては長い月日とやらも
おれにしてみれば ふり返ってしまうとあっという間のことなんだよな。
せっかく捕まえたえさをぽろぽろこぼして運んでたやつ、あたりのメスにふられまくってなんとか相手をみつけたやつ、いつも楽しそうにカメラをおれにむけていたやつ、
たまに思い出してしまう。
そんなとき海はおれになにもいってはこない。
太陽がなにかを察して 去り際におれの顔を赤くそめる。
大地もつきあいで赤くそまるときがある。
しばらくしておとづれる静寂に、月とたくさんの星が、おれをなぐさめにやってくる。


とにかくこうやってずっといる。
おれの肌はもう相当変わってしまったが、
同類とちがって勝手に服をしたてる職人もいないし、
まあおれは変わらないんじゃないかな。
ずっと、というと曖昧だが、
まあ、ずっと。


散文(批評随筆小説等) (何かについて打った、何かをまとめるスペース) Copyright (1+1)/4 2013-04-28 23:53:31
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