私が私であることを
亜樹


 凛と張った送電線が朝の冷気に共鳴し
 スクランブル交差点の信号が一斉に赤になる頃
 私は私が私であったことを証明できる
 数少ない証言者である。


 温んだ泥からガマガエルが顔をだし
 蛹の中から瑠璃色の揚羽が羽化する頃
 私は私が私であったことを偽る
 唯一の虚言者である。


自由詩 私が私であることを Copyright 亜樹 2013-03-04 20:38:39
notebook Home 戻る  過去 未来