ちんたら
三田九郎
青信号の横断歩道を渡っている
僕は歩くのが遅いけど
青だから気にせず歩く
と 車がこちら側に曲がってきて
僕のために止まる
とたん 気持ちに冷や汗が湧き
悪いことをしているわけでも
悪気があるわけでもないのに
急に申し訳ない気持ちになって
しなくてもいいだろうに
小走りに横断歩道を渡りきる
背中に アクセルを踏み込んで走り抜ける車の音を聞き
気持ちがまた 少し痛む
運転手だって別にイラついている感じじゃなかった
特別急いでいるわけでもなければ
青信号の横断歩道をお兄さんが歩いている
運転手にとっては
それだけのことだったかもしれない
ただ 僕の存在が
歩いている僕が運転手の進路をふさいでいる
そのことが たとえ
当たり前の振る舞いで
そうだと頭でわかっていても
気持ちに汗が吹き出てきてしまう
なぜだ
なぜだろう
赤だからって
時には無視してしまうように
青だからって
いつでもちんたら歩けない