群青三月の課題詩「愛」  「途上にある者」
木原東子

「途上にある者」


われわれはあなたへ向かっている
神よ、あるいは名も無い者よ
あるいは不在の者よ

古代の人間が考えた神話の神々
もうお呼びじゃない
怒りの神、復讐の神、審判する神
いい加減にしてくれ
権力者が権威づけに利用した神
それは通用しない21世紀

ついにあなたを追い詰めた
少なくともその道筋はわかった
そう願うのは正しいか

無限とも見える時空を制する法則の権化

偶然と必然の混合物なのか、神よ

複雑系を見事に計算し尽くす超絶計算機なのか、神よ

いまだに愚かなままの人類
愚かなりに協力してあなたの影を慕いゆく
神よ、われわれにその使命を与えたのでしょう


愛の形
小さな慰めを賜ったのか
われわれが発明したのか

全部の歴史を引き連れて
ロッククライマーのわれらの存続を
生殖が可能にした時

愛の形が、その両のてのひらがある
ナザレの大工が決意したとき
人の哀れさのゆえに

親鸞が確信した時
もっとも簡単な救済の言葉を
親と子が笑みを交わす時

死後も護ってくれる祖先を信じた時
居ても立ってもいられずに
いのちの電話をダイヤルした時に

生まれ,生き抜き、苦しんで(何のために)
そして無にかえる時
神よ、法則よ、仕組みよ、真理よ、せめて途上にあることを

一瞬の美しいものも醜さによってゼロとなり
遺伝子のプールとしての役割はあれども
早く生まれすぎた残念なわれわれです

絶望したわけではないのです


自由詩 群青三月の課題詩「愛」  「途上にある者」 Copyright 木原東子 2013-02-22 18:54:09
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