こがね まわりみち
木立 悟





とどかない色
陽の輪郭の
ひらきかけた
ふたつの手
ひとつ まぶしく
請われるかたち


夕暮れをしまい
常なるものをたたみ
庭の雪を見るともなく見
動かない川を聴く


服をすべて洗ってしまい
外に出れない
窓から離れ
窓を振り返る


雪は紅く
とまどいは浅い
光には渦
ためらうはひとり


たいせつなものが消え
なにも変わらず
どこか白く
どこか はかなく


結露も雨も数え終わり
わたすものもわたし終えた
その静かな疲れを
膝にのせて


晴れ間が庭をゆうるりとすぎ
雨が雪をまたたかせ
近づくもの 遠のくもの
知らずに置いていかれるもの


まわり径
暗がりを暗がりに伝う径
ゆるやかに下る
夜の水の径


右目の上に
めまいのように現われる
水銀球の柱のほうへ
枝葉はそよぎ 空を隠す


みどりをたたむ手に添うこがね
見えない生きものをふちどるこがね
真夜中の雨に目をつむり
扉を描く白を見つめるこがね


音が降り
径に触れ
息を吹き 影を揺らし
歩むものの行方すべてを
冬へ冬へ傾けてゆく




























自由詩 こがね まわりみち Copyright 木立 悟 2013-02-18 01:49:04
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