sweet pain,sweet rain
itukamitaniji

sweet pain,sweet rain

雨の匂いがした夕方 じきに降り出すかもしれないって
君が僕に言う それなら僕のせいだなって僕が言う
雨男とは僕のことさ 晴れた空もたちまち曇るのさ
なんて決まりきったジョークを 繰り返す毎日だった

雨宿り 逃げ込んだ鉄塔の下
そこから 何処にも行けなくなっていた

誰の声も聞こえない 雨は全ての音を消した
この世界に僕らだけを残して 後は全部消えた


すっかりずぶ濡れの靴で歩く 僕ら終わりを知らずに
水溜まりに映る 冴えない自分の顔を踏ん付けて
重たい荷物は邪魔になって 少しずつ捨てていった
大人にならないとって 世界は僕らを急かしていた

誰も居なくなった 世界で独り
君が守りつづけたものは何?

あの頃の僕らは 箱の中に閉じ込められたまま
小さく開いた窓から 灰色に濁った空を眺めていた
嵐の向こう側にあるであろう 青を想像しながら
ずいぶん時間がかかって その色彩は褪せたかもしれない

君が蓄えた力は ようやく翼へと形を変えたんだ

抜け出して はじまるんだよ
抜け出して 雨の街を


自由詩 sweet pain,sweet rain Copyright itukamitaniji 2013-02-14 18:17:27
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