明くる日の丘
山中 烏流
風に騒ぎ立てる木の葉の影を踏んで、はしゃぎまわる
子供たちを見ていた
庭先で香る金木犀を指して
あなたは今日も
幸せそうに、笑う
*
恥ずかしいものばかりを選び取って
名前を付けては
過ぎ去っていく/遠くなる
日々、
思い思いを口走った彼らが
瞬く間に消えていってしまうのを
わたしたちは
いつも、いつまでも、いつになっても
カーテン越しに見送った
耳鳴りのように
それ
は、すぐ近いところで
わたしの名前を呼んでいる
残像のように
あなたの手を引いて、丘を下るわたしの影と
綺麗な花が揺れていた
たくさんの忘れられなかったものたちが
付きまとい続けるから
わたしたちは
どこまでも、丘を下っていった
*
歌を歌うように
息をするように
言葉をなぞるように
手を触れるように
安物の、ありふれた言葉使いで
何よりも愛したかったものが
あなたでも、わたしでもなかったとしたら
どれだけ幸せだったのだろう
思いをしたためるように
パンを口に運ぶように
空を見上げるように
あなたの名前を呼ぶように
*
薄く窓を開けて
空を行く鯨の群れに手を振った
ちりばめられた光源すら寝静まった夜に
あなたは
そっと、目を閉じる