「痛みの記憶」
桐ヶ谷忍

歯の神経を抜いても
たまに何日間か痛みがある事があるという
神経は抜いたのに

それは痛みの記憶
抜いた神経の周りの神経が痛みを覚えていて
少しの間痛みを訴え続けるのだという

神経はもう無いのに



車が走る
運転席にはあなた
助手席には誰か座っているだろうか
座っていると良い

もし不在で、代わりに
死んだ私が座っていたとして
あなたはいつまで私を座らせておくだろう

それもまた、痛みの記憶、として
あなたはいつまで
その痛みを訴え続けるだろう

私はもう居ないのに


自由詩 「痛みの記憶」 Copyright 桐ヶ谷忍 2013-01-18 21:28:40
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