はちゃめちゃな年越し
夏美かをる

大晦日 日系スーパーまで高速を飛ばして 注文していたお節を2組取りに行く
太巻きとシアトル巻き、上の娘の好物のイクラの瓶詰と、
私しか食べない刺身も一緒に買う
「Japanese noodlesは嫌い」と上の娘が言うので
年越し蕎麦は買わない
「これを食べて日本人は何人も死んでいるのだろう?
命を掛けてまで食べる食べ物とは到底思えない。
娘達にも食べさせることを禁ずる」
と旦那がしつこく言うので、お餅も買わない

お節1組を大晦日の夜に食べる
1組44ドルもしたのに、唐揚げとか入っている
栗きんとんは入っていない
それでも私以外の3人は何の疑問も感じていない
下の娘は結局唐揚げしか食べなかった

6時からTV-Japanで紅白歌合戦が始まる
「嵐では誰が好き?」などとしつこく娘達に訊いて
無理やり盛り上がろうとする母
上の娘は櫻井君、下の娘は松潤とのこと
その娘達はPrincess Princessの登場を楽しみにしている
13年前アメリカに来た時に持ってきた唯一のCDは
プリプリのベスト盤
母の影響ですっかり娘達もプリプリのファン
「このTVショーのどこがそんなにスペシャルなんだ?」と旦那が突如割り込む
「選び抜かれた日本のベストシンガーしか出れない年末恒例の歌のコンテストなんだ」
と答える
興味もなさげに「お〜や〜?」とだけ言って、旦那は別室のテレビをつける

娘達はプリプリの登場を待ち切れずに
「テープにとっておいてね」と言い残して
ベッドルームへ退散
未だに自分達だけでは寝れないので、旦那は添い寝しに行く
1人残って紅白の続きを見る
『ヨイトマケの唄』に感動する
ちょうど大トリで中居君がソロを歌っている時に旦那再登場
なんだかドキドキしてしまう
案の定旦那が呟く
「ん?これが日本のベストシンガー?」
「いいの、彼の場合はこれで。いい味出してるんだから」と言いたかったけど、
“いい味”のうまい英訳が出てこないし、中居君キャラの説明も面倒なので、
とりあえず無視する

無視された旦那はそのままベッドルームへ直行
ということで、2013年幕開けの瞬間も一人リビングで迎える
外の花火の音があれだけうるさいのに、誰も起きてこない

翌日“A Happy New Year”の挨拶もしないで
「キッチンのシンクの蛇口が外れてしまったので買いに行こう!」と旦那が提案する
蛇口を求め Home Depotを徘徊する元旦のよき日
そのHome Depotは私達のような家族連れで賑わっている
ランチはマック マックも私達のような家族連れで賑わっている
夕方いつも通り子供達は体操教室に行き
ディナーはもう1組のお節
テレビではお待ちかね、プリプリが歌っていて 娘達はノリノリ
私が一緒に歌ったら「ママ、歌わないで!」と2人から同時に突っ込まれる

寝かせる前に「お節で何が一番好き?」って訊いたら
「イルカ!」と上の娘が答える
「唐揚げ!」と下の娘が答える
娘達の学校と旦那の仕事は明日2日からもう始まる

何やら日本人の目には はちゃめちゃに映るだろうけど
娘達にとったら、これが普通の年越し
大体こんな過ごし方をこれからも10年20年と繰り返して行くことだろう
いや、繰り返して行きたい!

家族4人が同じ屋根の下で 無事新年を迎えられれば それでいいのだ
これ以上望むことなど何もない!と
今年も私は私に言い聞かせる


自由詩 はちゃめちゃな年越し Copyright 夏美かをる 2013-01-03 06:21:06
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