連休熱
ただのみきや

クリスマス以降
全くやる気が起きなかった
どうにか今日で仕事納め 
やっと時間が心に追いついたのだ


裸婦像みたいな街路樹の肩にカラス


除雪車に削られた白い壁に車を着けて
ふわりふわりと雪蛍
まるい飴玉頬張ると ラジオからは第九
ああ幸せな王子よ 師走の行事よ
今年最後の土曜日よ


観光客が金落とす場外市場は殺気立ち
たらりたらりとカモ行けば
悲鳴も上がれば熱も出る 
さあ気持ちをしっかり持って
財布が空になっちまう


休み休みと言ってはみても
大きなイベントまるでなし
お金も笑えるほどになし
還付金で息子のお年玉を確保した
それでも鼻歌交じりで浮かれてしまう


これから起こるであろうことを預言するのは容易い

・31日夜そばを喰う
・元旦朝雑煮を喰う
・DVDを借りて見る(去年は確か黒沢の七人の侍だった)
 時間がある時じゃないと見れないようなやつを見る
・テレビのくだらないお笑いを見ては「くだらねぇ」と言って笑う
・本を読んでは昼寝して起きてまた本を読む
・何か食べては昼寝して起きてまた食べる
・テレビのバカなお笑いを見ては「バカだねぇ」と言ってやっぱり笑う
・家族で花札かトランプをする
・別に買うものはないけど買い物へ行く
 お年玉を持っている息子だけが強気だ
・「おれの休みはこれで終わっちまうのか」と言って嘆く
・一つくらい詩も書くだろう


それでも幸せな連休だ
かけがえのない休日だ
あっという間に過ぎて行く
すぐに仕事が待っている


涙が出るほど思うのだ
心の底から安らぎたいと
だけどそれはまだ先の話
地上のお勤め終えてのご褒美だ


今はこれで満足しよう
なあカラスよカラスよカラスさん
世界で一番幸せなのはおれたちだよな
ここでこうして今世界から飛び出して
時間からも飛び出して
休息の地へむかって心を羽ばたかせ




自由詩 連休熱 Copyright ただのみきや 2012-12-29 22:50:37
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