誕生日
たもつ

 
 
ひし形の歪んだ街に産まれて
時々、綿菓子の匂いを嗅いで育った

弱視だった母は
右手の生命線をなぞっている間に
左耳から発車する列車に
乗り遅れてしまった

毎日、どこかで花が咲き
毎日、どこかで花は枯れた
それは意味であり
意味であることに意味はなかった

みんな年をとった
話をしたことのある人が
一人、また一人と息を引き取った
それなのに人は
名前も持たずに産まれた
 
 


自由詩 誕生日 Copyright たもつ 2012-12-28 19:30:19
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