No Country
そらの珊瑚

風が
やすやすと
国境を越えて
やってくる

クリスマス寒波に
背中を丸めて帰りを急ぐ人の
ひとりにひとつ用意された家路をたどれば
夜に沈んだ土地に
ぽつり、ぽつりと
灯りがともされれば
人がいとなむ家がそこにあることを知る

あのひとつひとつが
国だったらいいのに
おしょうゆ、きらしちゃって、と
おとなりさんに
借りにゆく気軽さで
人も
国境を越えていければいいのに

風が
渡り鳥を連れてくる
春になれば
彼らが自らの体温を使って
温めた卵から
命が生まれるだろう
その翼は
かるがると
国境を越えていく


自由詩 No Country Copyright そらの珊瑚 2012-12-24 09:04:24
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