ファンタスマゴリア(たむらしげるの絵本)によせて
梅昆布茶

沈黙の惑星は
能弁なのかもしれない

その星の水際にはとりどりの
言葉の端くれが堆積しているという

それを採集することが
盲目の考古学者たちの日々の務めなのだという

中央の大陸には
累積した悲しみの伽藍があって
それを測定する器械が設置されているが
その統計が何処へ報告されるのかを
僕は知らない

その星には母性局があって
つねに母が母であるための放送を流している

或いは病んだ父のためのカプセルが無数にあって
常にそれは満杯らしいのだが

子供たちは水溜りに映った影たちと遊び戯れて
飽きることをしらない

街には無数のベクトルが交差し
それぞれの方向をめざしながら
微熱をともなった電磁音を発信し続けて
空気はそれによって満たされている

野外に設置された巨大な幻燈機は
様々なニュースや恋愛物や喜劇や活劇も放映するのだが

ちいさな快楽や愉悦とともに
本当はこの世界そのものを
投影しているのかもしれないのだ




自由詩 ファンタスマゴリア(たむらしげるの絵本)によせて Copyright 梅昆布茶 2012-12-16 07:15:54
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