吐く
夏美かをる

「吐きたかったら 吐いちゃった方がいいよ。
その方が気分が良くなるからね。
吐くと 体の中の悪いものが一緒に出るんだよ。
だから吐いた方がいいんだよ。

そう、上手に吐けたね!
偉い、偉い!
そうやって吐くごとに治っていくからね。
大丈夫だよ!」

子供の背中をさすりながら
そう励まし続ける夜更け

ああ、でも本当は私が励まされたい…

“偉いね、偉いね!
自分も疲れているのに
頑張って子供の看病してるね
大丈夫だよ!
その子は明日には良くなってるよ”
なんてこと
お願いだからどなたか言ってくれませんか?

子供が病気になる度
心細さと心配と看病疲れで頭がくらくらする
そんな私のことは
一体誰が心配してくれるの?


ああ、それにしても疲れた…
思考回路が壊れていく…


『吐きたかったら 吐いちゃった方がいいよ。
その方が気分が良くなるからね!』


いくら吐きたくなっても
50近いおばさんには
こんな優しい言葉を掛けてくれる人など所詮いるわけがない


だから人知れず書いている
詩(のようなもの)


難しいことなんか 何一つ分からない
文学的価値など これっぽっちもなくてもいい!
しかるべき人に評価されなくたって
ポイント一杯もらえなくたって
そんなの気にするか!
吐きたいから
素直に吐いてるだけ!
何か文句ありますか!?
(あれ?何で私急に怒ってるんだ?)


本当はね、
『そう、上手に吐けたね。
偉い、偉い!』
と、誰かに言ってほしい―
50近いおばさんだって
誰かにいつも励まされたいんだよ
褒められたいんだよ
いや、50近いおばさんだからこそ
誰かにかまってほしいんだよ…
(あれ?今度は何で泣いているんだ、私?)


ヤバいな…
疲れがピークに達しているな…




ゲ〜〜〜〜〜〜〜っ!

あっ!また吐いた!

思考回路、回復!



「今度も 上手に吐けたね。
偉い、偉い!
また今体から悪いものが出たよ!
明日にはきっと良くなってるからね。
大丈夫だよ。
ママがついているからね」


自由詩 吐く Copyright 夏美かをる 2012-12-14 03:57:33
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