大地に降り頻る金色の毛はブロンド女の陰毛でそれを知らないから食べたりできるのだとチュパカブラがフェイクファーのマフラーを抱き締めながら言った。そいつのしているのもやはり金色でおれはゴールデンバットを吸っていたのだけど口の中に時折入る葉っぱが自慰の前のものなのか自慰のあとのものなのかわからなくてとりあえず手を突っ込んで取り出した、金色だった。数億年前に死んだ女の化石がいまも降り注ぐのだ。女の巨大な死骸はみずみずしいまま山の頂に横たえられている。恥丘は、(至極まっとうに)切り揃えられて、大陰唇が風で揺れる。その顔は化粧みたいな憂いに覆われていてほんとうの表情を見るのは難しい。宇宙人と話したあと女の腰の辺りに立ち並ぶ屋台でべっこう飴を買うと親爺が「今日も一段と綺麗だねえ」と下卑た目で死骸を見ながら渡してくる。べっこう飴は均一に金色に覆われていて輝いていた。陰毛を噛み潰しながら通りを抜けて家の鍵をポケットから取り出すと襲われまいかと早急にドアを開けて閉めた。中には少女の死体がある。冬だったのか、黒色のセーラー服を着ていて、血が流れていた痕跡だけが首筋に残っている。顔は戦闘間際のインディアンみたいにところどころ黒ずんでいるが、もともとは白くて綺麗だったことを想わせる。睫毛が蝶の触覚みたいに跳ね返っている。四畳ばかりの部屋を満たさんばかりに少女の広がりは、虫の羽音も聞こえさせないがしゅーだのふぅーだの間の抜けた音ばかり流しやがる。おれはゴールデンバットとべっこう飴をすばやくゴミ箱に叩き込んで、少女の足の周りを這い回って引き出しを開けて彼女の髪の色と同じブラックストーンを取り出した。ライターも黒くマジックで塗ってある。膝の辺りを椅子にして、なるべく少女の呼吸(それは彼女の死だった)と同調するように、黒いたばこを吸っている。体から金色が剥がれ落ちていくのがわかる。三本くらい吸い終わって、備え付けの洗面器に向かって投げると気味のいい音を立てて煙が舞った。服を脱ぎ捨てて風呂に入ると、浴槽は黒いインキで満たされている。ざぶんと音を立てて夜の中に潜って、息を止めて少し意識が遠のくまで待った。濡れ烏がひとり、濡れ烏がふたり……。頭の中まで黒ずんできたので勢いよく浴槽から出て、体も拭かず黒い裸形で少女の死体と対峙する。嫌気が差すくらい外が明るかったので雨戸を閉めると発光するキルリアン写真みたいな自分の体くらいしか見えない。目を瞑って、手探りで少女の膣を探し当てるが、切れ目を入れた太股であったり腹であったりしてなかなか容易に見つかるものではない。肉の抵抗を失ったものはすべて贋物であるが、贋物だかどうだかわからないのだから結局ほんものかだなんてどうでもいい話だ、あった。そのままずぶずぶと体を潜り込ませる。土竜のように。が、視界をなにやら光が遮っていて、どうしたことか、目をこじ開けてみると、口の中にまだ彼女の陰毛が残っていた。それに少女の死体が気づくと途端に膣痙攣を引き起こして、光がなくなってしまうまでおれを閉じ込める。地響きがする。あいつが気づいたのだ。おれは目玉を押したときのように頭の中に昼が起こりつつあるのを感じたが、それと同じように、ぴょこんと死体の膣から飛び出たおれのつま先が、どうにもそれを仕向けたのだと思えて、とりあえず彼女の子宮にキスをした。彼女はなにも答えない。


自由詩 Copyright  2012-12-12 21:42:44
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