遺産
salco

 目には目を
 歯には歯を
タカ派のネタニヤフを選んだ時から
この基本方針の底上げは決まっていたことだ
 目ん玉1ケにつき10ケが100ケに
 歯1本につき建物1棟が1街区ごと吹っ飛ばすに
防戦にしちゃ血の気が多いこった
「攻撃は最大の防御なり」

なぜ自分らが
パクスローマ時代のディアスポラと
ドイツ人がしでかしたホロコーストの尻拭いをさせられるのかと
バルフォアの寝言に抗い続けた土民どもが
恵んでやった荒れ地にも満足しないのなら
沈黙と恭順を返すまで生殺しにするしかない
和平合意とテロリズムのローテーションにうんざりの
これがイスラエル国民の総意だろう
ガザはワルシャワゲットーの蜂起そっくりじゃないか
誰も助けに来やしない

中近東随一の軍事大国が
聖戦などとアツい少数民族と違い
史実だけを根拠に居直るのは
人の子が父呼ばわりした自分達の神が
人の子の信徒の世界で何の護符にもならなかったことを
彼らが身を以て知って来たから
祖国を持たぬ移民がどんな扱いを受けるのか
異民族蔑視の先でどんな目に遭うのかを
歴史を以て知って来たからだろう
で、神とモーセの契約については金曜の食卓と
シナゴーグでのみアツく語られている

お手手つないで共存共栄?
居候の軒先から陸の孤島に戻り来たユダヤの子孫は
異民族に統治を許せば国がどうなるかを「経験」済だ
そしてローマやビザンチン帝国の紆余曲折と今を知っていながら
死海文書の地名を掲げて国家再建を正当化する
世界の誰もが
アステカやインカ帝国の(曲折あらばこそ、な)今を知っているから
この論理に整合性が一体あるのかをわかっている
 北海道が今さらアイヌ民族の独立国になるか
 太田道灌の子孫に皇居の返還請求権があるか
テレビの前で耳掻きの日本人もわかっている

ユダヤ民族の歴史はある種
同化を拒み徹した自尊心の悲劇ではあった
が、イスラエルの傲慢に米軍や国連軍が介入しないのは
その建国が未曾有の虐殺の上に成り立つからで
その印蘢を前にしては
彼らの自己正当化を看過し続けるしかないのらしい
近代いや人類史の最大汚点
その首謀者ヒトラーは悪魔の化身でも狂気の代表でもなく
根深い反ユダヤ主義の土壌が育んだ理想的指導者であったに過ぎない
その負い目がヨーロッパ各国と合衆国に共有されている
だから被害者という歴史的立場を楯の野放図な加害
この図式にいつも情状酌量が働く

全く、総督には足を向けて寝られないイスラエルだ
それでいて一網打尽の民族浄化には踏み出せない、この延々
う〜ん、総督が頭から離れない


自由詩 遺産 Copyright salco 2012-12-06 23:17:34
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