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葉leaf

シュレッダーにかけられた美しい哲学も 空港で踏みつけられた時計の神経も 郵便に紛れ込んだ一粒の生命体も 残らずお湯の湖に浸していく 足から尻、腹から肩へと 気圧と水圧の嶺の接する所へと 宴は際限なく皮膚に飲まれていき 夜は切れ切れに口から指し示され ふと、誰かが沈黙するのが聞える

曇り空の下、手袋をかけ、果樹園でリンゴの選別をしていると、一層日が重くなり、ぱらぱら小雨が降ってくる。すぐに止むだろうと作業を続けていると、少しずつ雨脚が強くなり、首筋に触れる雨滴が冷たい。空を見上げると黒っぽい雲が一面に広がり、山の向こうまで途切れそうにない。暫くして雨は止んだ

朝の闇が凍った意識のようだ くしゃみをする 季節の変わり目の寒さに対応しきれずにだと だが朝の物音が血液を模倣しているようだ それに朝の家具ははっきりと目覚めすぎていて 朝の月は空から飛び出しそうだ そんな朝にくしゃみをする そんな朝をくしゃみする 私も凍るためには必要な手続き

父母が青い採りかごへと収穫したリンゴたちを、運搬車まで運び、選別してコンテナに入れる。大きくて傷のないもの、小さくて傷のないもの。これらは贈答用の商品として浅いコンテナに並べられる。つる割れや鳥・虫に食われたものは家庭用として深いコンテナに。日は陰り、リンゴを家へ運ぶ頃は闇が。

冬は日記帳の中に書き込まれた一筋の金属 あなたの髪が放つ表情から消し去られた温度を厳しくゆるします 冬は改札口に突き刺さった一羽の小鳥 あなたの指先がこれから描こうとする愛に正しく謝ります 冬は未踏の森の奥に開かれた匂いたちの店 あなたの目が話している素朴な矛盾に小さく頷きます

シルバーシートのくぼんだ部分に落ち葉が集まっている。頭上の枝に気を付けながら、その落ち葉を足で脇へと寄せる。するとそこにはピンの頭が見えてくる。ピンの頭にある穴に、L字型のピックの先を差し込むと、力を込めてピンを引き抜く。果樹園は迷宮のように樹が生い茂り、しばしば迷い込んでしまう

剪定した庭木の枝を東の畑の少し開けた空間で燃やす。炎は勢いよくまっすぐ立ち、その上を煙がゆっくり上っていく。フォークで枝を沢山掬うと一気に火の上に投げ載せる。乾いてない枝と葉は白い煙を一面に漂わせ、思わずむせて後ずさる。煙が治まるとまた次の枝を載せていく。寒い日だが火の周りは熱い

電車に乗って 鋼鉄の衝動に囲われ 風景の多彩な光面に距離の情熱を放ち トンネル内部では自然の多様な記憶に恐怖の印を残して 向かって行く 太古の駅と街並みの どこまでも忘れて行く過程を遡って 老いて行く 過ぎて行くのを遡って 既に終わった者達に挨拶するために 電車は全てを遡って行く


自由詩 twitter Copyright 葉leaf 2012-12-04 09:16:15
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