自家中毒
そらの珊瑚

記憶はなにを食べて生きながらえているのだろう

指先から冷えていくのを彼女はまだ気づいていない

埃を吸ったあとの掃除機をそっと抱きしめる

モーターの余熱が伝わって やっと明日につながる

冬のプラグは凍りついている

記憶は貪欲に食べ散らかすのだ それが他人の瞳であっても

どこかで遠くサイレンの音

彼女は包まれてラードになる

フライパンの中で溶けていく

境界線が発熱を繰り返し 嘔吐する


自由詩 自家中毒 Copyright そらの珊瑚 2012-12-03 09:36:58
notebook Home 戻る