昼と白 Ⅱ
木立 悟




凶兆鳥まがいどりのように葉は離れ
次々に口もとにやってきて
何も得られず
土に落ちる


爪と貝が溶け
聴いている
海の失い場所から
海の向こうの海を
聴いている


硝子の街に
つづく足跡
眠ったままの鳥の群れ
月の上を越えてゆく


星の墓や物の墓
永い永い天気雨
小さな音を呑もうと近づき
径にひとり 残される


かしぎ 傾ぎ
緑は深く
空を刺すほどに波うって
音と土のしるしを付ける


裏切られた子は柘榴を見ない
あがめることも
追うこともなく
線路の上の 蜃気楼を踏む


白線がひとつ
水の前で途切れ
曇は斜めに曇を切り取る
不確かな 熱のひだを見る


鱗の蒼
鱗の径
のど削る音
やさしい音


切り取るという
さらに空に 切り取るという
残る行為に満たされるものには
見えることのない白の白


押し戻そうにも
押し戻せぬ色
鉄の風に乗る錆の粒
変化が変化を照らしゆくさま


わたしにはどうにもならないわたしを抱き
数億年後の地と星を見る
そこに在るもの 無いものを喰み
昼という名の
わずかなはざまをすぎてゆく




























自由詩 昼と白 Ⅱ Copyright 木立 悟 2012-11-25 21:39:56
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