枯葉
岡部淳太郎

空から枯葉が落ちてくる
頭上の木から切り離されるのではなく
空の見えない高さから
無音とともに落ちてくる
空の見えない高さの
さらに高いところの
その向こうがわ
宇宙の深淵のような場所から
粒子のように枯葉は落ちてくる
いや、落ちてくるのではなく
ただ やってくるのか
この地を
目指しているのではなく
この地にたどりついてしまった枯葉たち
いま切り離されたばかりではなく
ずっと前から枯れていた
老いた乾き
それらの葉がこの地の重さに引かれて
やってくる
重力は淋しい
その透き通った感情の中で
枯葉は次々にやってきて
降り積もる
あまりにも軽すぎる心
それゆえに尊い
葉脈のほころび
空の見えない高さの
さらに高いところで
宇宙の深淵のような場所で
大きな枝から離れた時のことを
この地上の休息の中で
枯葉は思い描いている
斥力は恩寵
離れられるしあわせ
その計らいとともに
枯葉はたどりついた場所で
腐りながら眠る
そのようにして
この土に同化する
(夢を見ることなく)

いまもこうして
どんな時にもかかわりなく
空から落ちつづける枯葉たち
その小さな落下を肩に受けて
この地に生まれた小鳥が
傷ついた翼をかかえて
もう一度飛び立とうとしている
自らの物語を
口ずさんでいる
(夢を見るために)



(二〇一二年十月)


自由詩 枯葉 Copyright 岡部淳太郎 2012-11-24 20:08:29縦
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