細野のおばさん
salco

近所の子らが小銭を握って
フルタのチョコやオレンジガムを買う
細野商店はおばさんがやっていて
娘と息子がひとりずつ

近所の子らが大人になって
いつやらクリーニング代理店になり
細野商店は娘が嫁いでいなくなり
おばさんとドラ息子だけ

近所に不幸があったと聞き知ると
おばあさんになったおばさんは
細野商店を息子に預け
もっと詳しく聞き知りに出る

近所の悲嘆沈下をたずね当て
靴に溢れて施錠を忘れた玄関を開け
細野商店の顔をひょいと覗かせ
誰が何で死んだか耳立てる

近所に不幸を知られたその昔
夫を亡くして途方に暮れた
細野商店の越し方よりも新鮮な
同じ不幸に気が晴れる

近所の不祝儀総ナメばあさん
お咎め用心香典袋を仕入の代に
細野商店ひそひそ、ふむふむ噂の販売
葬式饅頭ばばあと呼ばれる


自由詩 細野のおばさん Copyright salco 2012-11-15 23:32:49
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