個と場
るるりら


教室から飛行機が見えた
窓の向こうでは轟音が聞えているはずだ
潮のにおいも混じっているはずだ
この町の大人達の自慢は この学校の窓という窓は
二重ガラスで 外の音が 全く聞えないことだ

今日も 心の中はどしゃぶりだった
心の内側では どしゃぶりなまま
なんの匂いもしない教室で
人と同じようにしなさいと 叱られる 

同じようにできる人達には 
同じようにできる人達の過程があると思う
転校生の私には それがない

先生は魚のアパートの話をしている
海の中にはコンクリートの塊をいくつも置いていて
漁礁というらしい
帰り道の空も 同じ形の社宅のアパートが連なっていて
漁礁だと思う
魚の観ている空も四角いのだろうか

川沿いの道だけは救われていて
川の先にある海に接した飛行場に向かう飛行機が
なにもかも考えられなくなるような轟音で飛んだ

轟音の中を飛んでゆきたい
川原にしゃがんで 石英の粒を探しながら
轟音の中を飛ぶと

この間まで住んでいたいた山の緑の綺麗なことや
バッタや原っぱのことを思っても許される気がした
小石も山から来たのかな
ちいさな粒になってきらきらしてる

いっぱい 流れに身をまかして
大河の心になったら
空を飛べるのかな 


同じでないことは喋っていけない
けれど同じでないことしか知らない


拾い集めた
石英の小石が 飛んでゆく

ちいさく ちいさく ナニモイエナクなりながら
でも 

わたし 広い原っぱの空
忘れて ない



自由詩 個と場 Copyright るるりら 2012-11-14 17:16:55
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