朝の天使が見えるなら
梅昆布茶

抱きしめたくなるような朝だ
今日の空から当番の天使が降りて来て鐘を鳴らす

空色のビイドロ細工の世界はいつものようにカーテン越しに
光の言葉で瞼を押し上げてひと時の旅を促がし始める

こんな日は人生が不思議な色あいで
さらさらと流れてゆく気がする

昨日のコンビニでの諍いなんてシルバービームの魔法で雲散霧消
とっておきの約束を今日だったら出来るだろうさ

打刻された封印は僅かな心のちからで外し得るもの
不毛の夢はいつか遠ざかり
忘れた歌をとりもどすほら

無常の岸辺を洗うさざなみを知っている君は
寸断された闇の記憶をたずさえて
生きてゆかねばならない

それでもこんな朝だってあるってことさ
今日も自分のためにミルクたっぷりの
インスタント珈琲をいれてあげるのだ

整理のつかないままに生きてゆく
そんな毎日だって結構なのだ

生活の過不足を問う前に自分の比重ははかったか
朝の小鳥のうたの意味を語れないまま生きていないか
ときどきは考えてみるんだ

大したことじゃないっていうかもしれないけれど
うまく言えないけどとっても大事なことかもしれないって
思ったりもするんだ

舳先に砕ける波濤は海の領域の広さを
知らしめるもの

夜の夢を忘れないででも
その虜にならないで珈琲の
渦の中に今日一日を
溶かし込んでゆくんだ









自由詩 朝の天使が見えるなら Copyright 梅昆布茶 2012-10-20 16:02:33
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