答えがない
蒼木りん

白い犬は死んでしまった

白い家の二階の窓から
猫が外を見ている
家からは出たことがなく
毎日
工事現場の音や
散歩する人や犬や
通りすぎる車や
ときどき来る鳥の影に
なんとなく
触りたいと思っている

どうして
この家の人と同じ『言葉』が
喋れないんだろう
どこからか
微かに
声が聞こえるのに
それが誰だかわからない

白い犬とは仲良くなれなかった

ただ
もう追いかけられることも
吠えられることもない
家のなかを少し自由に歩けるようになった

もっと遊んでほしい
もっとわくわくしたい
風に吹かれてみたい

君は『だれ?』

僕は『だれ?』




少し前

おまえは鳥の巣箱の
小さな窓から外の世界を見て
世の中をわかった気になっているだけだ

そんなことを
息子に言ったことを思い出した

そのとき
なんて言いかえってきたか
忘れた

からの巣に
猫が窓から外の世界を見ている

毎日



私の頭には
白い犬のような毛しか生えてこなくなった


ずっと一緒には
いられないから




自由詩 答えがない Copyright 蒼木りん 2012-10-20 00:18:41
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