黒猫の花
うみこ

生活を続けるために
縛られた猫になる
すきま風に揺れる
小さな花は、使わなくなったグラスの中

自由な生き方よりも
不自由の様子をうかがってしまうのは
そっちのほうが
安心できるからかな

最終の電車にも
黒猫は乗っている
そして街を駆ける
そのあと秘密の路地を抜けて
落ち着ける場所で眠る

一人のうちは
銀の夜風を
引き連れてゆくよ
その花に合う水をくみ
いつか初恋のハナちゃんみたいな人に
出会いたいな
そんな気分だ

恋心のような
淡い色は磨り硝子の向こう
冷たい風にぼんやり咲いている

ひとつ摘み取って飾るのさ

黒猫の花はヒナゲシのように可愛い花だ
きっと淋しさを
秘めているのだ


自由詩 黒猫の花 Copyright うみこ 2012-10-14 05:59:22
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