世界のなまえ
梅昆布茶

遠い海を思う日
すべての手足が色あせて見えた
博物館に展示された金飾の棺のように
自我という幻が何かを閉じ込めているようだ

風化させるままに人生を問えば
その答えもまたかさこそと音をたてる
千日の昼を生きて夜に裏切られる
質問箱はもういっぱいで君の返答を待っている

回答者は列を成して質問という配給を望み
疑問という貨幣はとうに錆びついてわずかに
権力者のレリーフだけがしるしを残す

街路という街路にはひしめきあう流行が
すばやく目配せしあって夜に消えてゆく

遠近法の消失点にはただ疑問符だけが風に揺らいでいる

今日もまた素敵なゆで卵をくつくつと音をたてて
疑問符の温度で茹でては見るのだが君は好きだろうか
今月いっぱいって何か約束した気がするのだが
君の顔と約束が思い出せないんだ
それはみんな時が奪ってしまった痛みなのかもしれない

もう極東は秋だ
無言の海岸線が波にえぐられて空と会話する
それを僕達は翻訳できないうただと知るのかもしれない
皮膚に突き刺さったガラスの破片は遠くきらめいて見えるのかい
砂浜にはこころの化石の断片が無数に埋まっているのさ

僕達は本当にこの世界の子供なのだろうか
いまだに親の名前も知らずに

僕らはその回答をさがしているのだろうか







自由詩 世界のなまえ Copyright 梅昆布茶 2012-10-08 02:42:10
notebook Home 戻る  過去 未来