紙の民
そらの珊瑚

一枚の紙の軽さを想う
一冊の本の紙の重さを想う
数冊の本の紙の重さをさらに想う
いつしか私自身の重さを軽々と超えていく


一枚の紙の厚みの薄さを想う
一冊の本の束ねられた紙の背表紙の厚みを想う
数冊の本の紙の厚みをさらに想う
それは私自身の高さを軽々と超えていく

ここに一枚の白い紙がある
やがてそこに文字が書かれる
重なり合って綴じられて本と呼ばれるようになる
それは私自身の指を使ってめくられていく

めくられたそばから
パルプは羊の胃でどろどろに溶かされ腸から吸収されていく
いくつかの変換ののち
温かい熱がそこから生まれ
水蒸気となって空を漂い
やがて森へ還っていく
 
一枚の紙に包まれて
身体をキャラメル化しながら
睡りにつこうとしたその夜に
一冊の本が訪ねてきた
初めて会ったようでもあり
どこか懐かしいインクの匂いを漂わせて

私は紙を愛しているのだろう
私は本を愛しているのだろう


自由詩 紙の民 Copyright そらの珊瑚 2012-09-28 08:16:10
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