ラヴァー、ラヴァー

視界が視界が縮める午後のきらいな音楽の、リフレクトの信号が鳴り止まない鳴り止まない鳴り止んだ気もするかもしれない、鳥、鳩の声、何百万もの星が過ぎるように車がインクをぶら下げて裂罅を集めていておれは、喉仏を上下させている、アモス、近付いて近付いて誰かの落とした手袋を眺める夕べの荒涼、緑色の宦官が卵塔場を歩いていく。
誰だ、知らない、聞いたこともない歌のように、そいつは音をふやけさせて歩いていく歩いていく、蔦の絡まった桶のほとりで虫けらが群れて虜になっている、阿婆擦れと言ってやりたかった、声がかすれた、たばこを吸いすぎた、そいつはじくじくと太っているのだ、澄んだ青色青色のインク、血肉さえも溶かしてしまう最終的な炎のきらめきで。
物憂げに、子供のいとけない手をも憚らせて、乳房に染まったゆるい液体をよろめかせて、くたびれた行為後の行為後の切り取り線をついばんでみる、鉄の味は、しない、球体関節の縁に隠れた悪魔が同じように卵塔のすきまで手招きをしているのにも目をくれず、竃の底まで連綿とした闇を、確かめるようにそいつは壁を触りながら進んでいった。
責め立てる漆喰壁の塗りたくった声、声、幻燈が回りながら叫び立てて叫び立てて数億年前の新聞紙をそれに貼り付けて、おれはようやく鞄を下ろして座り込むことができた、帳簿に書き込まれた名前たちが水に濡れたとたんに死に果てていくような、淡い感傷と触れる前の鼓動のひくつきを確かめさせて、おれはゆるりと緑を吸い込み始めた……。


自由詩 ラヴァー、ラヴァー Copyright  2012-09-22 15:58:48
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