秋、断片
メチターチェリ

秋、ゆらぎゆらいで定型にする、赤、一枚の花弁とひだる
息、野放しに、こおろぎと分け合いする左手をささげ
折り曲げた体躯から砂の、香ばしく明けそめる山の赤に
秋の道ゆらいで天高く空が落ちる、ゆれる、そよいでゆらぐ



声それて刈り入れられた、乾いて深くつごもる稲田、ほどけ
声をころし落ち穂のように伏せり、えにし、髪のにおいがなじむ
藁、あかりを食む間もなく、むしろを編む人のこより手を好む
肥える秋、左手に重ね、秋の虫のむしろ場にさしだす

秋ゆらいゆらぎって、たえに咲く花の昼にしに赤色をそそぐ
熟した木の実に洗い、むくろじの羽根をついて遊ぶ
息、野放しにあがり、さやいだ風に秋を感じる、手のひらに糸
道ゆらぎって持ちかえる夕、静けさ、さやいで弱弱しく握る

山田の、畦の、家路にむかう子供たちの足元、秋、ゆらぎゆらいで
暮れなずむすべての秋に
秋と言ってやりたい


自由詩 秋、断片 Copyright メチターチェリ 2012-09-19 00:20:09
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