流星群
梅昆布茶

その夜そらは光の雨で満たされて
彼方の丘の上にまたひとつ星が突き刺さり
まるで堕ちてゆく天使のようにうたいながら
ことばのかけらのように降り続けるのです

こえにならない声がきこえて
胸をざわめかせる音たちはなんだか
むかし聴いた波のおとにも似て
まるで夜の浜にうちよせるように

光年をこえて想いは
空の深奥からやってくるのです

ひとつひとつが憧れや後悔や
郷愁や破綻や慟哭や
さまざまの色をたたえて

分裂し拡散し微塵にくだけちって
記憶の堆積のフラッシュバックする
星の道の終着点の夜

そうなのです
それはむかし空にのぼって消えた
無数の想いが帰ってくる夜なのです

手をつないで渡った橋が見えたり
秋風と草原の匂いや
握り締めたてのひらにのこっていたものや
愛とよべない幼さや
川面のきらめき
午後の静謐
舌をつきさすたばこのくゆりや
喪失をともなった痛みの甘さや

体を震わせる幾千の漣のように
燃えて溶けてまた時のなかに
かえってゆくのです

そんな名前のない想いの数々に
であえる夜なのです








自由詩 流星群 Copyright 梅昆布茶 2012-09-09 03:55:42
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