twitter
葉leaf

労働者よ、君の呼吸からは いくつの宇宙の成り損ないが 筋肉と汗と書類の星座を作り損なったのだろう 労働者よ、君は疎外されていないしかといって自由でもない 労働することは人間を生み出すこと 身体を生み出すこと 精神を生み出すこと それらは尊くも卑しくもなく 関係を捕食すること

氷の朝の背後に隠された宝石を 君のヴァイオリンと共に叩き壊せ その背後では水鳥の内臓が人間の憂鬱を検査している そんな昼間には大きくなり過ぎた銃口が 君を飲み込もうとするから すべてを画像の中に宣伝し 労働が労働を無数に呼び込むときに 君は一人の商人であり銃と剣を売っている

物語と歴史のはざまにいくつもの声が重ねられた 歴史は時間と物質でできた朝陽の海だ 黒くて強くていつも広々と開拓している 物語は幻想と連続でできた山中の川だ 町と町、人と人との隙間をいつでも狙っている 美しい物語が醜い歴史と結婚するのは 醜い物語が美しい歴史と結婚するのと同じことだ

僕は詩を書きます 友人と語り合った帰りの車窓からいつまでも眺めていた夕陽を見た後に詩を書きます 他人から書けと言われてそれがいつの間にか血肉にまで滲み入ったとき詩を書きます 人を愛しているとき恥ずかしいから気持ちを分析分解して詩を書きます 挫折の度に苦しく激情に襲われ詩を書きます

彼方から飛来してきた音楽的なハンマーに 少しずつ情的に打たれているその血のにじむ味が痛い 落ち込みました、部屋の中に 落ち込みました、身体の中に 落ち込みました、私の中に 社会という伝聞の装置が体感の浴場と化しつつある今 その遥けさに食い込んでいく私の食欲がうねりにうねって快感だ

この身の一大事とばかりの一行目 やはり書き始めるんじゃなかったと後悔する二行目 それでも連結と展開に才を見せびらかそうとする三行目 やっぱり「才走った私」なんてどこにもいなかったと失望する四行目 それでも無様な責任だけは感じて書き抜こうとする五行目 やっと終われると安堵する六行目

人が人を愛するように 僕は例えば一通の被害届を愛したのです 人が人へと恋文を送るように 僕は例えば官公庁へ履歴書を提出したのです 人が人を愛撫するように 僕は例えば法律相談所の机を撫でたのです 人が人を憎むように 僕は例えば整然とした都市計画を憎んだのです 人が人を愛するように…

現実から幻想へと逃れても 幻想まで悲惨であるとき 花々はとても冷酷で 鳥たちは知らない歌を歌っていた 憎しみや復讐が存在理由である、と そんな悲しい言葉を所有することに慣れたとき 花々の美しさに対抗できるようになった 復讐の動機を遺失して初めて 人々が僕の中に根付き花を咲かせた

特に何ともない部位の皮膚が、意味もなく痒くなったり、軽く刺されるような感触を生み出したりすることがしばしばある。こういうとき、変な話だが、生きている実感みたいなものを感じる。水面下で生命の営みが乱雑に行われていて、説明のつかない閃きを生み出すということ、そこに生命の豊饒さを感じる


自由詩 twitter Copyright 葉leaf 2012-09-01 08:03:15
notebook Home 戻る