遥かな灯
ただのみきや

大海原の真ん中で
 立ち泳ぎ
途方に暮れて日も暮れて

せめて目指すべき陸地が見えたなら
それが遥かに遠くても
そこに向って進もうと
いのちの限り泳ぐだろう

だが今 四方八方 
変わらない 虚無だ

ここで力が尽きるまで
沈まぬように手足を動かし
風に漂うカゲロウのように
潮に流されるクラゲのように

それとも 一か八か
運と勘で勝負して
真っ直ぐに泳いでみようか どうせ
いつかは死ぬ身 早いか遅いかの違いだけ

全てが闇に包まれると 
                 
    ――このまま 沈んでしまえたら…… 

人生を振り返る 誰が悪いのかと問い続ける
「誰も 助けてくれない」 恨みがましく呟いて

涙で滲んだ目に星が瞬き

瞬き やがて星よりも低いところに

灯り 消え 灯り
  ――見つけたのだ
          灯台を! 

ゆっくりと 確実に
ひとかき ひとかき
微かに 微かに 光は近づいてくる
息は荒いが 笑みがよみがえる


    「 そうだ平等も不平等もない
      誰かに任せる訳にはいかない
      自分で見つけて自分で選ぶのだ
      どんな結果が待っていようと

      もしも地に足がつくところまで
            たどり着けたなら 
        灯台になるのも悪くはない
      闇の中で行き先もわからず
      たった一人震えている者に
      あきらめるな こっちだぞって
      光を照らしてやれるなら
      そう それがやりたいこと
      そんな人生を送りたかった
             見えてきた
            わかってきた
          これが進むべき道
         これが 自分なのだ 」


ゆっくりと 力が抜けて
ひとかき 最後に手を伸ばし
微かに 灯の熱を感じては
そのまま 静かに――


自分の道を見つけた者は幸いだ
    たとえ たどり着けても
        着けなくても

        遥か遠くに輝くものを 
        笑って心に握っている






自由詩 遥かな灯 Copyright ただのみきや 2012-08-26 22:42:30
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